初級の方へ 〜For Elementary〜


楽器を始めるのには様々な理由があったかと思います。
「昔ブラスバンドでやってたんだけど今度はジャズやポップスを吹いてみたい。」
「コルトレーンに心酔して自分でもやってみたくなって…」
「友達がバンドを始めたので私も…」
「ライヴを見に行ってカッコよかったから…」
「なんとなく趣味を持ちたくて…」
「スイングガールズを見て…」
「武田真治にあこがれて…(古!)」
などなど「憧れ」や「夢」は十人十色です。

レッスンをしていてよく初心者の方に聞かれる事があります。

「どれくらいで上手く吹ける様になりますか?」

難しい質問です。でも切実ですよね。
「果たして自分には才能があるのか?」とか
「このインストラクターは大丈夫なんか?」とか
いろいろ不安もあることでしょう。
せっかく楽器を始めたならば早くカッコよく吹いてみたいのが本音です。
中には「いや〜こういうのは何十年もかかるでしょうから…」と音楽教室が
泣いて喜びそうなセリフ
をおっしゃる極めて謙虚な方もいらっしゃいますが。
勿論これからプロになろうというのであれば、何十年もかかるかもしれません。
でもある程度吹けるようになるのは1,2ヶ月あれば充分でしょう。
(勿論個人差もありますが、少なくともうちの場合はそれくらいです。)

そうはいっても「どれくらいで上手く吹ける様になるか?」といっても
一人一人「上手い」の定義やレベルは違います。
「上手い」と言っているその人の頭の中で
誰がどんなプレイをしているかは人それぞれです。
武田真治がフリーキーな音をブリブリやってるかも知れないし、
マイケル・ブレッカーオルタネートフィンガリングとフラジオと
オーヴァートーンを駆使した超速フレーズをぶちかましてるかも知れないし、
ケニーGがソプラノでぴろ〜っと循環呼吸をしてるかも知れないし、
ソニーロリンズが野太い音でドドドドードドとモールス信号を打ってるかも知れません。

別にどんなプレイヤーのどんな音であっても構わないと思うのですが、
問題はそういったイメージがまったく無い場合です。

以前ある大学のジャズサークルサックスを吹いている学生
(私の受講生ではありませんが)に
「最近何聞いてるの?」と聞いたことがあるのですが、

「そっすね福○雅○とか聴いてますね〜サックスは特に聴いてないっす。」

というような答えが帰って来ました…。
サックス以外の音楽は聴くなという事は全くありませんが、
サックスの音は聴きましょう。できれば一流といわれているプレイヤーを。
自分の好きな「憧れ」のプレイヤーをたくさん聴いて、
いつでも頭の中でそのサックスの音が再生出来るようになりましょう。

レッスンの先生の音しか聴いてなかったりしたら駄目です。
なぜならその先生は恐らくたくさんのプレイヤーを聴いていて
その経験から生徒に何かを伝えようとしているでしょう。
教える側がAといっても教わる側がAと捉えるとは限りません。
でもそのバックボーンをある程度共有できれば理解も早いはずです。

また自分がサックスを吹くときに《サックスの音のイメージ》が無かったら
ただ空気で楽器を鳴らしているだけですから音楽ではありません。
「表現したいもの」「伝えたいもの」があることが大事です。

英会話を普段から聞いたことが無いのに
英語をしゃべれるようになりたいと思ってるのと同じです。
日本人は学校でさんざん勉強してもみんなしゃべれませんよね?
耳から入れてないからです。

音楽は耳からの芸術です。また音楽とは世界共通の言語です。
理屈や形式より「音」を第一に脳みそに入れましょう。
特に今までサックスの音を注意して聴いてきた事が無い人は
キャンバスは真っ白に近いかも知れません。
憧れのプレイヤーを見つけて何度も聴きこんで
その人の音であなたのキャンバスを彩ってください(かなりキザ?)。

まずは「憧れ」のプレイヤーを探して見ましょう!
それが「上手くなる」の第一歩ですから。
参考までに私がサックスを始めたばかりの頃に
影響を受けた演奏とそのアルバムを載せておきます。
たくさん有って紹介しきれないので悩みに悩んで6曲のみです。


@【ROAD SHOWS Vol.1】Sonny Rollins
『Best Wishes』

A【COLTRANE】John Coltrane
『Violets for Your Furs』

B【BOSS TENORS】Gene Ammons & Sonny Stitt
『There Is No Greater Love』

C【People Time】Stan Getz & Kenny Barron
『First Song』

D【Our Man In Paris】Dexter Gordon
『A Night In Tunisia』

E【Michael Brecker】Michael Brecker
『My One And Only Love』

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